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MS法人の設立手続き、定款作成代理、ドクターズコスメについて

薬事法の改正をうけて、医師や医療機関がMS法人を設立しています。
  
医師が開発し、又は医師の監修のもとで開発された化粧品
(いわゆる
ドクターズコスメ)への関心も高まり、
その化粧品の販売を行う会社の設立も増えてきました。
 
ここでは、MS法人の設立にあたっての注意点などをご説明します。

 

 「会社設立の基礎知識」もあわせてお読みください。
 

MS法人とは?


MS法人とは、いわゆるメディカルサービス法人の略で、医療法人が行うことのできない営利事業を担わせるために設立された「会社」のことをいいます。

医療機関は、医療機器や化粧品の販売を直接行うことが出来ません。また、医療機関内において(診療所や病院として届出をしている部分で)医療機器や化粧品の販売を行うこともできません。

そこで、これらを販売(医療機器の場合は賃貸・リースも)を行うために、医療機関とは別に、会社を設立し、この会社に業務を行わせるわけです。

MS法人、という呼称がありますが、法的な性質としては、通常の会社そのものです。法律上「MS法人」という法人形態があるわけではありません。

 

MS法人を設立する理由


 節税目的から、さまざまな事業展開への活用へ

昔は、MS法人の設立は、医療機関の節税対策のため、顧問税理士さん主導で行われることが少なくなく、事業目的としても医業の現場に関係する周辺業務(リネン・駐車場管理関係など)や、自医療機関のみに対する医療機器のリース等を行うものが多くありました。

近年は、純粋な「メディカルサービス」に限定されなくなってきているといえます。

薬事法改正や介護保険法施行などを受けて、医業を生かしまた医業と連携を取れるような、新たな事業展開を目的としたケースが増えてきており(医療機器や化粧品の製造販売、訪問介護やデイサービス・デイケアなど)、

また、改正薬事法への対応のため、コンタクトレンズや化粧品等の販売行為を明確に医療機関から分離させるために設立するケースも増えました。
→コンタクトレンズの販売

こうしたケースでは、法律上の許認可が関係することから、行政書士が指導・提案し設立手続きを代理することが多くなっています。

活用方法の例  いずれも、薬事法の許認可が関係する

(1) コンタクトレンズを販売するため(眼科)
 →高度管理医療機器販売業・賃貸業の許可が必要

(2) 化粧品を開発し、製造販売するため(皮膚科、美容系)
 →化粧品製造販売業許可が必要

(3) 医療機関に、医療機器をリース・賃貸、医薬品を販売するため
 →医療機器によっては、高度管理医療機器販売業・賃貸業の許可又は
   管理医療機器販売業・賃貸業届が必要
 →医薬品に関しては、医薬品店舗販売業・医薬品卸売販売業等の許認可が必要
 

 

医療機関を顧問先にお持ちの税理士の先生方へ

顧問先のMS法人が医療機器(医療材料や器具類も含まれます)の販売や賃貸・リースを行う場合、医療機器の販売業許可が必要な場合がありますので、扱う医療機器と、許可の要否を、今一度ご確認いただけるとよいと思います。

自医療機関のみに医療機器を販売・リースする場合であっても、医療機器が高度管理・特定保守などの分類に該当すれば、薬事法上の「販売業・賃貸業許可」が必要です。

医薬品についても同様に販売業許可が必要です。

医療機関での物品販売(営利行為)は可能か

診療所は、医療法第1条の5により、医業を行う場所として定義されており、この前提で、開設の際に診療所区画を明示して届出をして(法人開設の場合は許可を得て)います。開設後といえども、診療所は医業を行う場所ですので、ここで物品販売を行えば、届出内容に違背し、場合によっては虚偽申請をしたということになりかねません。また、医療法7条5項では、営利目的での診療所・病院開設に許可を出さないことができるとされており、非営利性が明確になっています。

さらに、コンタクトレンズの販売には、薬事法上の高度管理医療機器等販売業許可が必要ですから、こちらの面から見ても、販売区画と診療所区画は明確に区分する必要があり、診療所内で許可を取得することはできません。現実にコンタクトレンズを診療所内で販売しているとすれば、無許可販売ということで薬事法違反になります。

以上のことから、医療機関におけるコンタクトレンズ販売はできないと解されます。

化粧品については、医療機関における化粧品提供は化粧品の効能効果の範囲として示されている範囲を超える効果をもつとの誤認を与えがちですので、十分な配慮が必要ですし、医療機関が営利行為を行う場所ではない以上、化粧品販売を診療所内で行うことは適法とはいえないでしょう。

なお、個別のケースについては管轄保健所の見解を確認してください。

 

MS法人の特徴と注意点


 法的には一般の会社と同じ

MS法人は法的には一般の「会社」ですので、その設立にあたっては、医療法人等と異なり監督官庁の認可は不要です。

定款の認証、株主総会(社員総会)・取締役会等の決議、出資金払込みを経て登記を行うことで設立できます。
つまり、設立手続きは、通常の会社と同じです。

  会社設立の基礎知識
 

 設立には薬事法・医療法の許認可の知識が必須

通常の会社と異なるのは、ここをお読みの皆様の場合には薬事法上の許可が必要になるということです。
化粧品や医薬部外品の製造販売、医療機器や医薬品の(医療機関への)販売には、薬事法の許可が必須なのです。

そのため、設立にあたっては、事前に許可のことも視野に入れて準備をすることになります。たとえば、

・許認可要件と規制 - 責任者の配置、組織体制の構築など
・定款(目的) - 薬事法の許可上適切な表現としておく
・事務所 - 薬事法の許可、医療法の届出・許可、いずれにも整合するよう検討
・役 員 - (を参照ください)
       総括責任者・販売管理者・診療所管理者、すべての常勤性の確保

よって、MS法人の設立にあたっては、薬事法・医療法、両方の法律の観点から検討をしなければなりません。
 

 薬事法・医療法の許認可を取得する

化粧品の製造販売元になるためには、化粧品製造販売業許可が必要です。
医薬品や医療機器の販売・賃貸・リース等には、医薬品販売業や高度管理医療機器販売業などの許認可や届出が必要です。

診療所の管理者である医師の方は、薬事許認可における責任者にはなれません。
化粧品製造販売業の総括責任者は化学の専門科目を一定以上修了していれば就任でき、高度管理医療機器等販売業の販売管理者は医師資格があれば管理者になれますが、通常は、総括責任者等に従事することによって、その時間帯に診療所の管理者として常勤していないことになってしまうためです。

また、診療所として届出もしくは許可を得ている場所では、販売用の化粧品等の製造業許可は取得できません。

管理者である医師以外の方を責任者としていただき、適切な事務所・製造所を確保していただく必要があります。

  化粧品を製造販売する
 
医療機器を製造販売する
 
高度管理医療機器の販売
 
コンタクトレンズの販売
 

役員の検討


MS法人は、多くの場合、発起人の関係する(役員となっている)医療法人と取引関係をもつことが多いですから、法律上適切な役員構成を検討しておく必要があります。

ここは、単に会社設立を行おうとする場合と異なる点といえます。

医療機関・医療法人側の非営利性を確保することが前提となります。
 

 医療法人理事長の場合

医療法人とMS法人は、取引関係にあって利害の相反する立場となります。
そこで「医療法人」と「MS法人」の代表者(理事長と代表取締役)が同一人物であると、利害相反する立場を同一人物が兼ねることになります。

理事は、法人から業務執行につき委任」を受けた形になっています。利益相反する2法人の代表者が同じ人物であるときは、医療法人はその意思決定において原則である非営利性を貫かねばならず、一方で営利法人であるMS法人は、会社という性質上利益(営利)を追い求めます。

よって、同一人物が両法人の(理事会・取締役会等の審議を経ていても)代表権・業務執行権を持っているために、医療法人において営利法人の影響が否定できません。医療法人の大原則である「非営利性」に抵触するといえるでしょう。MS法人の代表取締役は、医療法人の理事長は避けるべきであるといえます。

なお、通知「医療機関の解説者の確認及び非営利性の確認について」(平成5年総第5号・指第9号、平成24年3月30日「医療法人の役員と営利法人の役職員の兼務について」により改正)によれば、医療法人の理事長がMSの代表を兼ねることはできないと解されます。

(取引を行う両法人の代表者が同一であれば、
民法108条の自己取引・双方代理にあたります。医療法人とMS法人の取引関係が、単なる債務の履行に当たる場合、もしくはあらかじめ理事会・取締役会で許諾があった場合、取締役会で承認があった場合などは、同条2項や判例、商法75条、有限会社法30条等によって、双方代理禁止の定めは適用されないものの、医療法人とMS法人の関係を見るときは、医療法54条の主旨とする医療法人の非営利性という観点から、その貫徹を前提として考慮すべきでしょう。)
 

 理事長ではない理事の場合

理事は、民法上では対外的に法人を代表するとされます。しかし、医療法人においては、定款により『理事長のみが医療法人を代表する』こととなっています。

医療法46条の3第1項により医療法人では理事長を定めることとされ、同条第3項において「理事長は医療法人を代表する」こととなっています。

医療法は理事が法人を代表することを定めた民法53条、及び、理事の代表権に制限を加えても善意の第三者に対抗できない旨定めた民法54条を準用していませんから、結局医療法人では「理事長のみが法人を代表する」こととなります。

このため、モデル定款19条『医療法人運営管理指導要綱』I  2役員  (4)1 では「理事長のみが代表する」としています。)
 
医療法人の平理事(代表権のない理事)がMS法人の代表取締役を兼ねている場合、医療法人の意思決定においては理事会における制御がなされ医療法人の代表権もありませんので、必ずしも非営利性を阻害するとはいえないでしょう。

反対に、医療法人の理事長がMS法人の平取締役を兼ねることも、同様のことが言えると思われます。

つまり、法律のみを見れば、平理事がMS法人の役員を兼ねることは禁じられていないのです。

しかし、医療法人とMS法人の取引の実態に鑑みて、医療法人からMS法人に過大な支払いがなされているような場合や、MS法人の役員報酬が過大な場合には、事実上医療法人の利益が分配されているとみられる(医療法54条違反)こともありますから注意が必要です。

こうしたことを考慮して、医療法人行政の現場では、下記の通知等を根拠に、医療法人とMS法人(その他取引のある営利法人)の役員の重複は、原則として認めないとしています。

ただし、次の場合で、医療機関の非営利性を損なわないと考えられる場合(医療機関と営利法人の取引額が少額の場合も含む)は、医療法人の理事長以外の理事がMSの役職員と兼務することは不可ではないとされています。

・MSから物品購入・賃貸,役務提供などの商取引がある場合や、医療法人がMSから土地・建物を賃借する場合で、MSの規模が小さいなどでにより役職員を第三者に変更することが直ちには困難であり、契約の内容が妥当

 、

「医療法人の役員と営利法人の役職員の兼務について」
 
平成24年3月30日 医政総発0330第4号、医政指発0330第4号

「医療機関の開設者の確認及び非営利性の確認について」
 
平成5・2・3 総5・指9 厚生省健康政策局総務・指導課長連盟通知
 第一 1(2)の3,4

「医療法人運営管理指導要綱」
 
I 組織運営 2役員 (3)適格性 (備考欄) 

 

他方、理事長、理事が、
  ・MS法人に出資すること
  ・MS法人の監査役になること
については原則として制限はありません。

ただ、MS法人のあげた利益は最終的に株主・社員に配当という形で帰属しますから、理事長がMS法人に全額出資し唯一の株主・社員になる場合、医療法人はMS法人の唯一株主である理事長と取引したもの、つまり理事長の利益相反取引となるといえるでしょう。
 

以上のような、法的な根拠、行政指導などは、経営者が企業経営上の法的リスクを管理する(法的リスクマネジメント)にあたっての重要な判断材料になります。

そのうえで、事業環境・状況とを冷静に比較考量して検討いただくとよいでしょう。

 

社会福祉法人の関連法人の設立の場合


社会福祉法人が関連法人を設立する場合は、「社会福祉法人審査基準」「定款準則」等の規定を参照し、より詳細な検討を加える必要があります。
社会福祉法人は、公益性の高い法人として、租税特別措置法上の優遇措置がとられている一方で、その運営には医療法人以上に行政規制があります。

社会福祉法人の役員要件は、これらの基準等により、より詳細に定められており、かつ、監督官庁により行われる指導検査・監査における指導項目です。
社会福祉法人と取引をもつ株式会社等の役員になっている者が、社会福祉法人の役員に就任することが規制される場合があり、基準に抵触する場合は口頭もしくは文書での改善指導の対象となります。

関連法人設立の場合は、役員要件について十分ご検討頂き、行政書士にご相談なさることをお勧めします。

 

設立事例


当事務所で設立手続きを行ったMS法人の例をご紹介します。

  事例集(化粧品・ドクターズコスメ)

  事例集(医療機器)

  事例集(眼科MS法人=コンタクトレンズ販売)

 

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